UKIYOE HOUSE ブログ 2024年3月1日
川瀬巴水「伊豆 伊東 松月院」
当館からもほど近い「松月院」は、伊東駅裏のおよそ0.6Kmの高台にあって、別名「桜寺 」「花寺 」とも呼ばれる造園の素晴らしいお寺です。
その松月院が描かれた浮世絵があると知ったのが2022年の9月でした。その頃の当館はまだ「浮世絵ハウス」という名称ですらなく、終わりの見えないコロナ渦で前任者から事業を引き継ぎ、名称も含めた根本的なリニューアルを模索していた時期でした。
同年に熱海のMOA美術館で開催されていた「所蔵 冨嶽三十六景と東海道五十三次」を訪れ、伊豆はまさに東海道の一部であり、伊東もまた浮世絵に縁がある土地ではないかと考え始めたのもこの頃でした。
そして、浮世絵の進化系でもある「新版画」の代表的画家・川瀬巴水(かわせはすい)が、昭和8年に伊東を描いた作品があると知り、すぐに画像を保存して松月院に向かったのです。
川瀬巴水「伊豆 伊東 松月院」昭和8年
実際の松月院では、版画にある藁葺き屋根の鐘撞堂ははるか昔に焼失していましたが、敷地内の別の場所にとても立派な瓦屋根の鐘撞堂が再建されていました。
さすがに風景はすっかり変わってしまった…かと思いきや、よくよく見ると、巴水の描いた手石島(ていしじま)が同じ位置に見えているじゃないですか!
そして、この相模湾に浮かんだ手石島と右手の岬を今でも同じように見渡せるのは、他でもない、当館から眺める伊東の風景だったのです。
…この日の気付きをきっかけに、浮世絵のような宿泊体験をテーマとして新規開業したのが現在の「浮世絵ハウス」なのです。川瀬巴水が90年前に描いた一枚の版画が、当館にとっては浮世絵と伊東を、過去と現在を、そして未来を繋ぐ重要な作品となりました。
そんな貴重な「伊豆 伊東 松月院」の実物が、なんと浮世絵ハウスにやってまいりました!!
川瀬巴水「伊豆 伊東 松月院」昭和8年 実物
川瀬巴水の版画は1作品について100枚ほどが刷られたと言われておりますが、伊東を描いたこの図柄はその後に増版されていないので、こちらは希少な初刷の一点となります。
90年前の版画は状態によってはひどく劣化してしまうのですが、こちらは適切な方が大切に保管して下さっていたので、今も鮮やかな色彩を保っています。
ご縁があって当館にやってきたこの作品、ゲストさまには贅沢に鑑賞していただきたいのですが、版画は紫外線に弱く長時間の掲示には向きません。そこで当館では、こちらの実物から新たに精巧に複写したレプリカをゲストルームに展示させていただきます。
実物は責任を持って安全に保管させていただき、機会がありましたら、伊東観光の促進となれる企画展示などに出展させていただければと考えております。
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