UKIYOE HOUSE ブログ 2022年9月26 

浮世絵と松月院と手石島


こちらは川瀬巴水(かわせはすい)の作品「伊豆 伊東 松月院」です。

川瀬巴水は明治〜昭和を生きた浮世絵師で日本を代表する近代版画家でもあります。彼が昭和8年に描いたこの作品には、伊東の松月院の鐘撞堂越しに見える手石島(ていしじま)が描かれています。


川瀬巴水の描いた手石島(左)

当館から見た伊東港と手石島


手石島は、握り拳に似ていることが名の由来の無人島です。そして松月院は当館から徒歩15分。ならば川瀬巴水の描いた風景は今もそこにあるのでしょうか?


確かめに行くしかありませんね


その名の通り、松の造園や高台からの眺望が美しい松月院。小規模ながら起伏に富んだ庭園には立派な池もあり、春には早咲きの桜が楽しめるそうです。


本堂へ上がる石段の両脇に、巨大な鬼瓦が鎮座していました。狛犬が置かれていることはありますが、鬼瓦は珍しいなあと思いましたら…


由来が書かれていました。

もとは藁葺きの屋根であった松月院は、昭和11年に立派な瓦屋根に建て替えられます。しかし平成元年の伊東沖群発地震で被害を受けてしまい、補修のため重量1トンの鬼瓦は外され、全面改築で現在の銅板葺きの屋根になりました。松月院を50年以上見守ってきた鬼瓦は、現在も参道の両脇で厄を防いでいるのです。

(鬼瓦は必ずしも鬼の顔の造形ではないそうです。)


さてさて、お目当ての鐘撞堂はというと…こちらにありました。


浮世絵と比べるとずいぶん立派ですが、これは先ほどの本堂の建て替えと同じで、もとは藁葺き屋根だった寺院全体が昭和11年に瓦屋根に改築されたんですね。鐘撞堂は地震の被害を免れたのかな?大変立派な瓦屋根です。


そして手石島は…


ありました!同じ位置に見えてます。ちょっと木々が育ちすぎたみたいですが。。


川瀬巴水は、間違いなく昭和8年この場所から手石島を描いたんですね。

その3年後に鐘撞堂は瓦屋根へ改築され、それ以前の姿を伝える資料が浮世絵だけだとするなら、大変貴重な一作でもあるわけです。


本日は1枚の浮世絵からスタートして、思わぬ歴史散歩となりました。


松月院(曹洞宗桃源山松月院)
所在地:静岡県伊東市湯川377
入場料:無料
電話:0557-37-2691


浮世絵ハウスから見る朝焼けの手石島も大変美しいです。


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